薬物依存症は、単に個人の問題として片付けられるべきではなく、社会全体で支えるべき課題である。私はかつて薬物依存症に苦しみ、回復して20年以上が経過した。この長い年月の中で、薬物依存症に対する法制度や支援体制はどのように変化し、そして今後どのような改善が求められるのか、その経験から語りたい。私が薬物依存症に陥った当時、法制度は主に「取り締まり」に重点が置かれていた。薬物使用者に対する罰則は厳しく、回復よりも刑罰が優先される傾向にあった。支援体制も不十分で、専門的な治療を受けられる医療機関は限られており、回復を支える社会的なセーフティネットもほとんどなかった。私は孤独の中で薬物と戦い、法的なペナルティへの恐怖と、社会からの孤立に苦しんでいた。しかし、運良く専門の治療施設に出会い、回復への道を歩み始めた。数年間の治療とリハビリを経て、なんとか社会復帰を果たしたが、その後も薬物依存症の後遺症と向き合い続ける日々だった。20年が経過した今、薬物依存症に対する法制度や支援体制は大きく変化したと感じている。まず、法制度においては、薬物依存症を「病気」として捉え、治療や回復支援の重要性が認識されるようになった。単なる刑罰だけでなく、治療と社会復帰を促すための制度が整備されつつあると聞く。例えば、薬物事犯者に対する刑務所内での専門プログラムや、社会復帰後の更生保護施設への入所支援などが挙げられる。また、支援体制においては、医療機関や自助グループだけでなく、地域の相談機関やNPO法人など、多様な主体が回復支援に関わるようになった。患者一人ひとりの状況に合わせた個別支援や、家族への支援も充実してきたと感じる。精神保健福祉センターや保健所などでも、薬物依存に関する相談窓口が設置され、早期発見・早期介入の重要性も認識されるようになった。これらの変化は、薬物依存症で苦しむ人々にとって、大きな希望となっているだろう。しかし、その一方で、依然として多くの課題が残されていることも感じている。最も大きな課題の一つは、法制度と支援体制の「連携不足」である。刑事司法と医療・福祉が十分に連携できていないため、薬物事犯者が適切な治療や支援を受けられないまま、社会に再び放り出されてしまうケースが少なくない。回復者が社会復帰した後も、継続的なサポートを受けられるような一貫した体制が不可欠だと感じる。